アルケンの炭素–炭素二重結合は、酸素を持つさまざまな試薬で酸化されます。二重結合に酸素原子を1つ渡せばエポキシド、OH基を2つ付ければ1,2-ジオール、二重結合そのものを切ればアルデヒドやケトンになります。
この記事では、同じシクロヘキセンを出発物にして、エポキシ化・ジヒドロキシル化・酸化的な開裂を順に見ていきます。どの反応も、生成物の立体化学(synかantiか)と、C–C結合が切れるかどうかが、反応の途中でできる環状の構造から説明できます。
一般には、酸化は「電子を失うこと」「酸化数が増えること」と定義されます。IUPACの用語集は、これと並べて、有機化合物については「酸素を得ること、または水素を失うこと」という定義も挙げています1。有機化学ではこれを、炭素に結合した酸素の数で数えると便利です。
図1は、シクロヘキセンから出発する4通りの酸化をまとめたものです。二重結合の炭素に注目すると、アルケンではC–O結合は0本です。エポキシドとジオールでは、2つの炭素がそれぞれ1本ずつC–O結合を持ちます。二重結合を切ってできるアルデヒドでは、C=Oの二重結合を2本と数えて、それぞれの炭素が2本ずつ持つことになります。エポキシドとジオールは同じ酸化の段階にあり(エポキシドからジオールへの変化は、酸化ではなく水の付加です)、C=C結合を切る開裂で、さらに1段階上がります。
OsO4)ではcis-ジオールになり、過ヨウ素酸ナトリウム(NaIO4)で開裂させるとヘキサンジアールになる。下段:オゾン分解でも同じヘキサンジアールが得られる。trans-ジオールはラセミ体で、図では一方のエナンチオマーだけを示した。アルケンが酸化されやすいのは、求電子付加反応の記事で見たのと同じ理由です。アルケンのHOMOはπ軌道で、そのπ電子が電子を欲しがる相手を攻撃します。この記事の酸化剤(過酸・OsO4・オゾン)は、どれもπ電子に攻撃される側、つまり求電子剤として働きます。
ただし、反応の進み方は一様ではありません。エポキシドの開環は、プロトン化や求核攻撃が段階的に進む、極性反応の典型です。一方、過酸によるエポキシ化は、いくつもの結合の組み替えが1段階で同時に起こる協奏的な反応です。オゾンの付加は五員環をつくる1,3-双極付加環化で、ペリ環状反応の記事で扱った反応の仲間にあたります。OsO4の付加も、同じく五員環をつくる付加環化で、原子で数えると(3+2)の付加環化(慣用的に[3+2]と書かれることも多い)として説明されます。
中性または酸性の過マンガン酸カリウム(KMnO4)のような強い酸化剤は、アルケンの二重結合を切って、カルボン酸などまで一気に酸化してしまいます2。この記事の反応は、どの段階で止めるか(エポキシドか、ジオールか、アルデヒドか)を選べる点に価値があります。
酸素原子1つと炭素原子2つでできた三員環のエーテルを、エポキシドと呼びます。IUPACの分類では、酸素が炭素鎖や環の2つの炭素(隣り合っていても離れていてもよい)に直接結合した環状エーテルが「エポキシ化合物」で3、そのうち三員環のものの母体の名前がオキシラン(oxirane)です。
アルケンに過酸(ペルオキシ酸、RCO3H)を作用させると、エポキシドができます。1909年にPrileschajew(プリレジャーエフ)が報告した反応です4。実験室でよく使われる過酸は、3-クロロ過安息香酸(mCPBA)です。
図2の4本の矢印は、1段階で同時に起こると考えられています5。遷移状態の形を蝶に見立てて、バタフライ(蝶)機構とも呼ばれます。遷移状態の形は、同位体効果の測定と計算の比較からも調べられています6。
酸素は二重結合の片側の面から、2つの炭素に同時に結合します。途中で結合が回転できる中間体(たとえばカルボカチオン)を経ないので、出発物の二重結合の幾何がそのまま生成物に写し取られます。(Z)-2-ブテンからは2つのメチル基が同じ側にあるcis体だけが、(E)-2-ブテンからはtrans体だけができます。
このように、立体配置だけが異なる出発物から、それぞれ別の立体異性体ができる反応を立体特異的と呼びます。求電子付加反応の記事で見た臭素付加も立体特異的でしたが、臭素付加がanti付加だったのに対して、エポキシ化は2つのC–O結合が同じ面にできるsyn付加です。cis体がメソ化合物になる理由は、エナンチオマーとジアステレオマーの記事を参照してください。
ここで、この記事で何度も使う2つの言葉を整理しておきます。IUPACの用語集では、synは「基準の面に対して同じ側」、antiは「反対側」を意味します7。二重結合への付加では、二重結合の面が基準になります。
同じ用語集は、synの過程をスプラ型(suprafacial)、antiの過程をアンタラ型(antarafacial)とも対応づけています7。ペリ環状反応の記事で使ったスプラ型・アンタラ型と同じ考え方です。
付加反応について言うsyn/antiは、2つの結合がどちらの面からできたか(反応の経路)を表す言葉です。生成物の2つの置換基が環の同じ側にあるか(cis/trans)とは、使う場面が違います(syn/antiは、鎖状の分子の置換基の相対的な向きを表すのにも使われますが、この記事では付加の意味だけで使います)。シクロヘキセンのような環状のアルケンでは、syn付加からcis体が、anti付加からtrans体ができるので、両者が一致して見えます。
エポキシドの三員環は、立体配座の記事で見たシクロプロパンと同じく、結合角が60°前後に押し込められています。このひずみのため、エポキシドはふつうのエーテルよりずっと穏やかな条件で環が開きます8。酸性の条件だけでなく、強い求核剤があれば塩基性の条件でも開環します。
環の開き方は、塩基性(求核剤が強い)の条件と、酸性の条件で変わります。図4は、2-メチル-1,2-エポキシプロパンを例にした比較です。
HClのプロトンを受け取り(矢印①②)、塩化物イオンが置換基の多い第三級炭素を、酸素の反対側から攻撃する(矢印③④)。HClからは、主に1-クロロ-2-プロパノールができます8。酸性で第三級炭素が攻撃されるのは、求電子付加反応の記事のブロモヒドリン生成と同じ構図です。プロトン化されたエポキシドの2本のC–O結合は同じ強さではなく、第三級炭素の側のC–O結合のほうが弱く、その炭素が正電荷をより多く担っています。遷移状態はSN2型の形をしていながら、カルボカチオンに近い性格(SN1型の性格)も強く帯びている、と説明されます8。
どちらの条件でも、求核剤は切れていくC–O結合の反対側から炭素を攻撃し、攻撃された炭素の立体配置は反転します(SN2反応の背面攻撃)。環状のエポキシドでは、これがtransの生成物として現れます。シクロヘキセンオキシドを酸性の水で開くと、trans-1,2-シクロヘキサンジオールができます5,8。
「酸性と塩基性で立体配置が変わる」と覚えるのは誤りです。酸性と塩基性で変わるのは位置選択性(どちらの炭素が攻撃されるか)のほうで、立体化学はどちらも、基本的には背面攻撃によるantiの開環です。
環ひずみによる反応しやすさは、生体の中でも発揮されます。求核剤は試薬のアルコキシドや水に限らず、DNAの塩基の窒素原子も、エポキシドの炭素を攻撃できます。
最も単純なエポキシドであるエチレンオキシド(オキシラン)について、国際がん研究機関(IARC)は「ヒトに対して発がん性がある(グループ1)」と分類しています。IARCの評価書は、エチレンオキシドが代謝による活性化を必要としない直接のアルキル化剤であり、生体内で見つかる主なDNA付加体はグアニンの7位の窒素に2-ヒドロキシエチル基が付いたものだと述べています9。これは、塩基の窒素がエポキシドの炭素を攻撃して環を開いた生成物にあたります。
逆に、体の中でエポキシドが作られてしまう場合もあります。多環芳香族炭化水素の一つであるベンゾ[a]ピレンは、それ自体ではなく、代謝によってできるジオールエポキシドが生物学的な作用を担う反応性の高い代謝物であることが、1974年に報告されています10。
エポキシドを経由すると、ジオールの2つのOH基はantiに付きます。では、2つのOH基を同じ面に付ける方法はあるのでしょうか。その代表が、四酸化オスミウム(OsO4)によるジヒドロキシル化(ジヒドロキシ化とも呼ばれます)です。
OsO4は、2つの酸素原子でアルケンの2つの炭素を同時にはさみこみ、五員環のオスミウム酸エステルをつくります5。オスミウムと2つの酸素(O–Os–O)の3原子がアルケンの2原子に付くので、原子で数えると(3+2)の付加環化です(慣用的に[3+2]と書かれることも多いのですが、ペリ環状反応の記事で見たとおり、角かっこは本来、電子の数を表します)。四員環を経る別の経路が提案されて議論が続いた時期もありましたが、アミンを配位子に使う不斉ジヒドロキシル化の系では、速度論的同位体効果の実験と計算の比較から、(3+2)付加環化が律速段階であることが支持されています11。
OsO4は2つの酸素で同じ面から付加して環状のオスミウム酸エステルをつくり、加水分解でOs–O結合が切れてもC–O結合はそのまま残るのでcis-1,2-シクロヘキサンジオールになる(syn)。trans-ジオールはラセミ体で、図では一方のエナンチオマーだけを示した。オスミウム酸エステルが加水分解されるとき、切れるのはOs–O結合で、炭素と酸素の結合は切れません。環の同じ側にできた2本のC–O結合がそのまま残るので、シクロヘキセンからはcis-1,2-シクロヘキサンジオールができます(図5の右)。触媒量のOsO4とNMOを使うこの変換は、実験手順がOrganic Synthesesにも収録されています12。エポキシドを経るtrans-ジオール(図5の左)と、ちょうど逆の立体化学です。
OsO4は高価で、毒性も非常に強い化合物です5。米国労働安全衛生研究所(NIOSH)は、空気中の推奨ばく露限界を時間加重平均で0.0002 ppm(0.002 mg/m3)とし、目の刺激や視覚障害などの健康影響を挙げています13。
OsO4のオスミウムは+8の酸化状態で、オスミウム酸エステルでは+6に還元されています。そこで実際には、OsO4を触媒量だけ使い、反応で還元されたオスミウムをN-メチルモルホリンN-オキシド(NMO)で酸化し直して繰り返し使います5。1976年にVanRheenenらが報告した方法で、報告者の所属企業の名前からUpjohn法とも呼ばれます14。さらに、キラルな配位子を加えてどちらの面から付加するかを制御する不斉ジヒドロキシル化も、Sharplessらによって開発されています15。
シクロヘキセンからtrans-ジオールがほしければ「mCPBA、次に酸性の水」、cis-ジオールがほしければ「OsO4(触媒量)とNMO」を選びます。同じ出発物から、中間体の形(片面にある三員環か、片面にある五員環か)の違いによって、逆の立体化学の生成物を作り分けられます。
ここまでの反応では、二重結合のうちπ結合だけが消え、2つの炭素をつなぐσ結合は残っていました。では、炭素–炭素結合そのものを切ることができるのは、どんな場合でしょうか。
この記事で扱う2つの開裂反応には、共通の形があります。まず、切りたいC–C結合の両側の炭素に酸素が付いた、五員環の中間体ができます。そのうえで、C–C結合の電子対が、隣のC–O結合をC=O二重結合に変える向きに流れ込みます。C–C結合が切れた分、両方の炭素にC=O結合ができるので、生成物はカルボニル化合物2つになります。
過ヨウ素酸(HIO4)やその塩(NaIO4)は、隣り合った炭素にOH基を持つ1,2-ジオールのC–C結合を切り、2つのカルボニル化合物にします。1928年にMalapradeが報告した反応です16。過ヨウ素酸が切るのはアルケンではなく1,2-ジオールなので、アルケンを切るには、まずOsO4でジオールにしてから過ヨウ素酸で開裂させる、という2段階になります2。
IO3−)ができる。環は開いて、両端にアルデヒド基を持つヘキサンジアールになる。水溶液中の過ヨウ素酸イオンの形(水和の程度)は省略して描いた。反応は、2つのOH基がヨウ素と結合した環状の過ヨウ素酸エステルを経て進みます2。ヨウ素は+7の酸化状態から+5の酸化状態に還元され、その分の電子を受け取ります。2つのOH基が隣り合った炭素に付いていることで、ヨウ素を含む五員環のエステルをつくることができます。
ジヒドロキシル化と過ヨウ素酸による開裂は、1つのフラスコで続けて行うこともできます。OsO4を触媒量加えたアルケンに過ヨウ素酸塩を作用させると、過ヨウ素酸塩がジオールを切ると同時に、還元されたオスミウムを酸化し直します。1956年にPappo、Lemieux、Johnsonらが報告した方法で、Lemieux–Johnson酸化と呼ばれます17。
二重結合をジオールにする手間をかけずに、1段階でC=C結合を切る方法がオゾン分解です。20世紀の初めにHarriesがオゾンと有機化合物の反応を調べ18、その後Criegeeが、現在受け入れられている反応機構を提案し、のちに1975年の総説にまとめました19。
Criegeeの機構では、オゾンとアルケンから最終生成物のオゾニドができるまでを、3回の付加環化(逆向きのものを含む)の連続として説明します19。オゾンは、中央の酸素に+、端の酸素に−の形式電荷を持つ共鳴構造で描ける1,3-双極子で、ペリ環状反応の記事の表に挙げた1,3-双極付加環化を起こします。
Me2S)で還元するとアセトアルデヒドが、過酸化水素(H2O2)で酸化すると酢酸が得られる。モルオゾニド・オゾニドの立体は省略した。最初にできるモルオゾニド(一次オゾニド)は、弱いO–O結合を2本も含む不安定な五員環です。すぐに、付加環化を逆にたどる形でC–C結合とO–O結合が1本ずつ切れ、カルボニル化合物とカルボニルオキシド(Criegee中間体)の2つに割れます。この段階で、もとのC=C結合は完全に切れています。
カルボニルオキシドも1,3-双極子なので、隣にあるカルボニル化合物のC=O結合に、向きを変えて再び付加環化します。こうしてできるのがオゾニド(1,2,4-トリオキソラン)です。モルオゾニドではO–O–Oと酸素が3つ連なっていたのに対して、オゾニドではO–O結合は1本だけ残り、3つ目の酸素は2つの炭素のあいだ(C–O–C)に入っています。
モルオゾニドからオゾニドへの変化は、教科書では「転位する」と表現されることもありますが2、1つの分子の中で原子が移動する転位ではありません。C–C結合とO–O結合がいったん切れてから、別の向きで組み直されています。図7の(Z)-2-ブテンでは、途中でできるカルボニル化合物とカルボニルオキシドは別々の分子です。シクロヘキセンのような環状のアルケンでは、2つが1本の鎖の両端として同じ分子の中に残ります。
オゾニドは過酸化物で、そのままでは目的の化合物になりません。そこでオゾニドを単離せずに、次の後処理で分解します20。
Me2S)21や亜鉛と酢酸などで還元すると、アルデヒドやケトンが得られます2,20。二重結合の炭素に水素が付いていれば、アルデヒドの段階で止まります。分子量の小さいオゾニドや過酸化物は不安定で、濃縮すると爆発の危険があります。このため、オゾニドはふつう単離せずに、そのまま後処理に回します2,20。
この記事の反応を、試薬・生成物・立体化学・C–C結合が切れるかどうかで並べると、表1のようになります。
| 試薬 | 生成物 | 立体化学 | C–C結合 | 鍵になる構造 |
|---|---|---|---|---|
| mCPBA | エポキシド | syn | 残る | 協奏的な遷移状態 |
mCPBA → H3O+ | trans-1,2-ジオール | anti | 残る | 片面にある三員環 |
OsO4(触媒)+NMO | cis-1,2-ジオール | syn | 残る | オスミウム酸エステル |
OsO4 → NaIO4 | ジアルデヒド | — | 切れる | 環状の過ヨウ素酸エステル |
O3 → Me2S | ジアルデヒド | — | 切れる | モルオゾニド・オゾニド |
O3 → H2O2 | ジカルボン酸 | — | 切れる | モルオゾニド・オゾニド |
表で立体化学を書いた反応(上の3行)は、どれも立体特異的に進みます(出発物のアルケンのE/Zが生成物の立体に写し取られる)。表を縦に見ると、立体化学は「酸素がどちらの面から、いくつの段階で入るか」で決まっていることが分かります。2本のC–O結合が1段階で同じ面にできる反応(エポキシ化・OsO4の付加)はsynで、いったん片面に環をつくってから反対の面から攻撃される反応(エポキシドの開環)はantiです。
C–C結合が切れるかどうかは、「両方の炭素に酸素が付いた環ができ、そこからC–C結合の電子がC=O結合へ流れ込めるか」で決まります。過ヨウ素酸はジオールからそのような環をつくり、オゾンは自分で最初から五員環をつくります。
Q1. (E)-2-ブテンをmCPBAでエポキシ化してから酸性の水で開環すると、2,3-ブタンジオールのどの立体異性体ができますか。
A1. メソ化合物の(2R,3S)-2,3-ブタンジオールができます。エポキシ化はsynなのでtrans-2,3-ジメチルオキシラン(ラセミ体)になり、開環は背面攻撃で片方の炭素の立体配置だけを反転させます。2つの炭素はどちらも同じ置換様式なので、どちらが攻撃されても、2つのエナンチオマーのどちらから出発しても、同じメソ体になります。synのエポキシ化とantiの開環を合わせると、全体としてはantiのジヒドロキシル化になっています。
Q2. 同じ(E)-2-ブテンをOsO4とNMOでジヒドロキシル化すると、何ができますか。
A2. (2R,3R)体と(2S,3S)体の1:1混合物(ラセミ体)ができます。2つのOH基が同じ面から付くsyn付加なので、Q1のantiの経路とは逆の組み合わせになります。
Q3. 2-メチル-1,2-エポキシプロパンをメタノールに溶かし、少量の硫酸を加えた場合と、ナトリウムメトキシドを加えた場合とで、メトキシ基はそれぞれどちらの炭素に付くと予想されますか。
A3. 酸性(硫酸)では、エポキシドの炭素の一方が第三級なので、置換基の多い第三級炭素にメトキシ基が付き、2-メトキシ-2-メチル-1-プロパノールが主にできると予想されます。塩基性(メトキシド)では、SN2反応として置換基の少ない第一級炭素が攻撃され、1-メトキシ-2-メチル-2-プロパノールになると予想されます。どちらも、攻撃された炭素では酸素の反対側から結合ができます。
Q4. 1-メチルシクロヘキセンをオゾン分解し、硫化ジメチルで後処理すると、何ができますか。過酸化水素で後処理した場合はどうですか。
A4. 環が開いて、1本の鎖の両端がカルボニル基になります。メチル基が付いた炭素はケトンに、水素が付いた炭素はアルデヒドになるので、硫化ジメチルの後処理では6-オキソヘプタナール(CH3CO(CH2)4CHO)ができます。過酸化水素の後処理では、アルデヒドになる側だけがカルボン酸まで酸化され、6-オキソヘプタン酸になります。
アルケンの酸化は、どれも「π電子が酸素を持つ求電子剤を攻撃する」ところから始まります。その先で、酸素が1つだけ入って三員環で止まるのか、2つの酸素がはさみこんで五員環をつくるのか、五員環からさらにC–C結合まで切れるのかによって、エポキシド・ジオール・カルボニル化合物が作り分けられます。