質量スペクトルやNMRを組み合わせれば、分子の中で原子がどうつながっているかは決められます。ところが、つながり方が分かっても分子の形はひとつに決まりません。単結合はくるくる回るからです。
回転で移り変わる一つひとつの形を立体配座といいます。立体配座は別の化合物ではなく同じ化合物の別の姿ですが、どの姿を取りやすいかは反応の進みやすさを左右します。この記事では、鎖状分子をNewman投影式で見るところから始めて、シクロヘキサンのいす形まで順に扱います。
IUPACの用語集は立体配座を、単結合まわりの回転によって相互変換できる立体異性体を区別する原子の空間配置と定義しています。ポイントは「回転で行き来できる」という部分です。
これまでこのサイトで扱ってきたR/S表記やE/Z表記は、対照的に立体配置の話でした。立体配置を変えるには、結合をいったん切ってつなぎ直さなければなりません。
立体配置が違えば別の化合物、立体配座が違うのは同じ化合物の別の姿。 前者は結合の切断が必要で、後者は単結合が回るだけで移り変わります。
二重結合が回らないのは、混成軌道の記事で見たπ結合があるためです。π結合は2つのp軌道が横で重なってできているので、回すにはこの重なりを切らなければなりません。だからcis/transの関係は回転では移り変わらず、立体配置として扱います。
ポテンシャルエネルギーの極小に対応する立体配座、つまり谷の底にあたる形を配座異性体(コンフォマー)と呼びます。立体異性体の一種ではありますが、室温では谷から谷へ絶えず移り変わっているため、ふつうは取り出して分けることができません。
ただし、まったく不可能というわけではありません。ジェンセンとブッシュウェラーは1969年、クロロシクロヘキサンを −150 °C 付近の低温で扱い、塩素がアキシアルにある配座異性体とエクアトリアルにある配座異性体をそれぞれ分離することに成功しています。分離できないのは原理の問題ではなく、室温では速すぎるという速度の問題です。
回転のようすを描くのに便利なのがNewman投影式です。ニューマンが1952年に提案し、1955年の論文で広めたもので、注目する単結合を真正面から、軸に沿って覗き込んだ図として描きます。
手前の炭素は点、奥の炭素は円で表します。手前の3本の結合は点から放射状に、奥の3本は円周から外向きに伸ばします。
手前の結合と奥の結合が作る角度を二面角(ねじれ角)といいます。図1の左では手前のC–Hと奥のC–Hが60°離れており、右では0°、つまり重なっています。
エタンのC–C結合を360°回すと、ねじれ形と重なり形が60°ごとに交互に現れます。そしてねじれ形がエネルギーの極小、重なり形が極大になります。
この差が回転の障壁です。ケンプとピッツァーは1937年、エタンのエントロピーの実測値が自由回転を仮定した計算値と合わないことから、回転が妨げられていることを示しました。のちの赤外分光による直接測定で、障壁は約12 kJ/mol(約2.9 kcal/mol)と定まっています。
12 kJ/mol は、室温の熱エネルギーの目安 RT(約2.5 kJ/mol)の5倍ほどですが、この程度の山なら分子どうしの衝突で容易に越えられます。エタンのメチル基は室温で猛烈な速さで回り続けており、実用上は「自由に回る」と考えて差し支えありません。それでも分子は、平均すればねじれ形にいる時間の方が長くなります。
では、なぜねじれ形の方が低いのでしょうか。よく使われる説明は2つあります。
ひとつは占有軌道どうしの反発です。重なり形では、向かい合うC–H結合の電子対どうしが最も近づきます。電子が詰まった軌道どうしが重なると、下がる分より上がる分の方が大きく、差し引きで反発になります(フロンティア軌道論の記事で触れたパウリ反発です)。
もうひとつは超共役です。ねじれ形では、一方のC–H結合の結合性軌道(σ)と、向かい側のC–H結合の反結合性軌道(σ*)がちょうど180°の位置関係になり、電子が少しだけ流れ込んで安定化します。重なり形ではこの位置関係が崩れます。
この2つのうちどちらが主因かは決着していません。 2001年にポプリスティッチとグッドマンが「超共役こそが原因で、反発ではない」と報告し、2003年にビッケルハウプトとベーレンツが反論、さらに反論が重ねられました。その後の原子価結合法による解析では、立体反発の寄与の方が大きいとされています。教科書が「立体反発のせい」と書いていても「超共役のせい」と書いていても、どちらも議論の一方の立場だと思っておくのが安全です。
超共役のように、軌道の向きのそろい方で分子の形や反応性が決まる効果は、立体電子効果の記事でまとめて扱っています。
置換基が付くと、ねじれ形どうしでもエネルギーが違ってきます。ブタンのC2–C3結合を見てみましょう。手前と奥にそれぞれメチル基が1つずつあります。
二面角による呼び名は、クラインとプレローグが1960年に整理したものです。0°付近をシンペリプラナー、60°付近をシンクリナル(慣用名でゴーシュ)、120°付近をアンチクリナル、180°付近をアンチペリプラナー(E1反応とE2反応の記事などでは反位配座とも呼ばれるもの)といいます。
もとの定義では、これらはそれぞれ前後30°の幅を持つ範囲の名前です(アンチペリプラナーなら150〜210°)。多くの教科書はアンチペリプラナーを「ちょうど180°」の意味で使っており、この点はケインとハーシュが2000年に指摘しています。
アンチとゴーシュはどちらもねじれ形で、結合の重なりという点では同じです。それでもゴーシュの方が約3.8 kJ/mol(0.9 kcal/mol)高いのは、60°しか離れていない2つのメチル基が互いの空間を取り合うためです。これを立体ひずみと呼びます。
一方、重なり形が高い理由は結合どうしの重なりそのもの(ねじれひずみ)です。アンチクリナルではメチルと水素が重なり、シンペリプラナーではメチルどうしが重なるので、後者の方が高い山になります。極大は谷底と違って分子がそこに留まらないため直接は測れず、シンペリプラナーの値は文献によって19〜21 kJ/molと割れています。
エネルギー差が3.8 kJ/molでも、ゴーシュが消えてしまうわけではありません。 室温でボルツマン分布を当てはめると、ゴーシュは3割ほど存在します。ゴーシュには右回りと左回りの2つがあるぶん、数の上で有利になるからです。
アンチペリプラナーという配置は、この先の記事でも繰り返し出てきます。E2脱離で抜けるHと脱離基がふつうこの位置関係を必要とするのは、切れる2本の結合と新しくできるπ結合が同時に重なる必要があるためでした。
環状になると単結合は自由には回れなくなりますが、それでも環は平らにはなりません。ここが直感に反するところです。
話の出発点はバイヤーが1885年に出したひずみ説でした。環が平面の正多角形だと仮定すると、三員環の内角は60°、四員環は90°で、四面体炭素が好む109.5°から大きく外れます。ここまでは正しい指摘です。
ところが同じ仮定を続けると、六員環(120°)にもわずかなひずみが残り、環が大きくなるほどひずみが増すことになります。これは実際とは合いませんでした。
解決したのはザッセで、1890年に環の炭素が同一平面に乗る必要はないと指摘します。折りたためば結合角を109.5°に保ったままひずみのない六員環が作れる、というわけです。彼は2つの折りたたみ方を示しました。今でいういす形と舟形です。
この主張は長く受け入れられず、モーアが1918年にダイヤモンドの結晶構造と結びつけて再提出してようやく定着しました。さらにバートンが1950年、この形の違いがステロイドの反応性を説明できることを示し、立体配座の解析は合成化学の道具になります。バートンはハッセルとともに1969年のノーベル化学賞を受けました。
2つのうち安定なのはいす形です。理由は2つあります。
ひとつは、いす形ではすべての隣り合うC–H結合がねじれ形になっていることです。舟形では船底にあたる2組の結合が重なり形になり、ねじれひずみを抱えます。
もうひとつが、図5の赤い結合で示した旗ざお水素の接近です。舟形では向かい合う2つの炭素の水素が同じ側に突き出し、互いに近づきすぎます。
実際には、舟形はエネルギーの極大(通り道)であって谷の底ではありません。船底を少しねじったねじれ舟形が極小にあたり、低温で気体を急冷すると分光法で捉えることができます。いす形との差は約23 kJ/mol(5.5 kcal/mol)で、舟形はさらに数 kJ/mol 高い位置にあります。
2つのいす形は互いに移り変われます。これを環反転といい、その障壁は約45 kJ/mol(10.8 kcal/mol)です。室温ではおよそ毎秒10万回の速さで起きています。
シクロヘキサンの1H NMRが室温では1本の線しか与えないのは、この反転がNMRの時間スケールより速く、2種類の水素が平均化されて見えるためです。−60 °C 付近まで冷やすと線が分裂します。
いす形では6つの炭素はすべて等価です。ところが12本のC–H結合は等価ではなく、2種類に分かれます。
環の軸に平行なものをアキシアル(軸方向)、環の外周に沿って外向きに出るものをエクアトリアル(赤道方向)と呼びます。地球儀の自転軸と赤道を思い浮かべると対応が取れます。
いす形を手で描くときは、次の順番でやると崩れません。
① 環を3組の平行線として描く(図6の六角形は、どの辺にも向かい合う平行な辺がある)
② アキシアルを鉛直に、上下交互に6本足す
③ エクアトリアルを2つ隣の環結合と平行に、外向きに6本足す
環反転が起きると、アキシアルとエクアトリアルはすべて入れ替わります。シクロヘキサン自身では2つのいす形が同じものなので、この入れ替わりは目に見えません。しかし置換基が付くと話が変わります。
メチルシクロヘキサンには、メチル基がエクアトリアルにあるいす形と、アキシアルにあるいす形があります。実測ではおよそ95 : 5でエクアトリアル側が優勢で、この比からエネルギー差は約7.3 kJ/mol(1.74 kcal/mol)と求まります。
アキシアル側が不利な理由は、図7の右に示した1,3-ジアキシアル相互作用です。アキシアルに立った置換基は、2つ隣の炭素から同じ側に立つ2本のアキシアル水素と向き合うことになります。
この相互作用の正体は、前節のゴーシュブタンと同じものです。C1–C2結合に沿ってNewman投影式を描くと、アキシアルのメチル基は環の炭素に対してゴーシュの位置に来ます。ゴーシュ相互作用(3.8 kJ/mol)が2つ分で7.6 kJ/molとなり、実測の7.3 kJ/molとよく合います。
置換基ごとのこのエネルギー差をA値と呼びます。ウィンスタインとホルネスが1955年に導入した量で、値が大きいほどエクアトリアルを好みます。表の値は、YamadaとInokumaの論文(2023年)が実験値としてまとめた表のkcal/molの値で、kJ/molはそれを4.184倍して丸めたものです。
| 置換基 | A値 (kJ/mol) | A値 (kcal/mol) |
|---|---|---|
CH3 | 7.3 | 1.74 |
CH2CH3 | 7.5 | 1.79 |
CH(CH3)2 | 9.2 | 2.21 |
C(CH3)3 | 20 | 4.9 |
興味深いのは、メチルとエチルでほとんど変わらない点です。エチル基は末端のメチルを環から遠ざかる向きに回せるので、アキシアル水素から見た「かさ」はメチルとあまり変わりません。
ところがtert-ブチル基では一気に跳ね上がります。3つのメチルのうち1つは必ず環の側を向くしかないからです。A値が20 kJ/molということは、室温(25 °C)での比が数千 : 1になるということで、実質的にエクアトリアルに固定されていると扱えます。
ただし、A値は2つの配座のエネルギー差をまとめて表した値です。その中身がすべて1,3-ジアキシアル反発だとは限らない点には注意してください。
置換基が2つになると、立体配置の問題が新たに生じます。2つの置換基が環の同じ面にあるか、反対の面にあるかという違いです。
これはcis/transの関係で、環反転では変わりません。環を裏返しても、置換基が環のどちら側に生えているかは変わらないからです。変わるのはアキシアルかエクアトリアルかだけです。
どの組み合わせになるかは、置換基の位置関係で決まります。いす形では隣り合う炭素が交互に上下を向くので、次のような対応になります。
| 位置 | cis | trans |
|---|---|---|
| 1,2 | ax, eq | eq, eq ⇄ ax, ax |
| 1,3 | eq, eq ⇄ ax, ax | ax, eq |
| 1,4 | ax, eq | eq, eq ⇄ ax, ax |
「eq, eq ⇄ ax, ax」と書いた行は、環反転で両方エクアトリアルの配座と両方アキシアルの配座を行き来するという意味です。当然、前者が優勢になります。
一方「ax, eq」の行は、どちらのいす形を取っても片方はアキシアルにならざるを得ない場合です。2つのメチル基のように置換基が同じなら、2つの配座は等価で1 : 1になります。
どちらの異性体が安定かは、置換基と位置の組み合わせで決まります。 1,2と1,4ではtransが、1,3ではcisが両方エクアトリアルを取れます。「transの方が安定」と丸暗記すると1,3で間違えます。
置換基が違う場合は、A値の大きい方をエクアトリアルに置いた配座が優勢になります。1-tert-ブチル-4-メチルシクロヘキサンなら(cis体でもtrans体でも)、tert-ブチル基がエクアトリアルになる側にほぼ完全に偏ります。この性質を利用して、配座を固定した基質を作れるのがA値の実用的な意味です。ウィンスタインとホルネスの論文も、まさに4-tert-ブチルシクロヘキシル誘導体の配座がひとつに決まることを足場にしていました。
そして配座が決まると、反応性が変わります。同じ置換基でも、アキシアルにあるときとエクアトリアルにあるときでは、周りの空間の空き方も、隣の結合との角度も違うからです。次の節で、その効きめがはっきり出る例を見ます。
E1反応とE2反応の記事で見たとおり、E2脱離では、ふつう抜ける水素と脱離基がアンチペリプラナーになっている必要があります(シンペリプラナーで進む例もありますが、はるかに不利です)。切れる2本の結合と、新しくできるπ結合が同時に重なり合う必要があるためでした。
いす形の六員環でこの条件を満たせるのは、水素と脱離基がともにアキシアルにあるときだけです。隣り合う炭素のアキシアル結合は上下交互に出るので、ちょうど180°の関係になります。
片方でもエクアトリアルにあると、二面角は60°前後にしかならず、条件を満たしません。つまり脱離できる水素は、脱離基とtransの関係にあり、かつ同時にアキシアルになれるものに限られます。
この要件は、cis/transという立体配置と、ax/eqという立体配座の両方がそろって初めて満たされます。どちらか一方だけを見ても答えは出ません。
これが鮮やかに現れるのが、メンチルクロリドとネオメンチルクロリドという2つの異性体です。どちらも同じ骨格(C1にメチル、C4にイソプロピル、C3に塩素)を持ち、違いは塩素の立体配置だけです。
まずネオメンチルクロリドから見ます。安定配座では、メチルとイソプロピルがエクアトリアル、塩素がアキシアルになります。
塩素の両隣にあるC2とC4の水素は、どちらもアキシアルです。つまり安定配座のまま、2通りの脱離がどちらも可能です。
ヒューズ、インゴールド、ローズは1953年、エタノール中のエトキシドでこの反応を調べ、3-メンテンが78%、2-メンテンが22%得られることを報告しました。C4側から抜けば三置換アルケンになるので、Zaitsev則どおり、より置換した方が主生成物になっています。
ところが、塩素の向きだけが違うメンチルクロリドでは様子が一変します。こちらは3つの置換基がすべてエクアトリアルになる配座を取れますが、その配座では塩素もエクアトリアルなので脱離できません。
脱離するには、わざわざ3つともアキシアルという不利な配座へ環反転しなければなりません。しかもその配座で塩素とアンチになるアキシアル水素は、C2のものひとつだけです。C4の水素はエクアトリアルを向いています。
結果として、メンチルクロリドの脱離はネオメンチルクロリドのおよそ200分の1の速さでしか進まず、生成物も2-メンテンだけになります。塩素の立体配置をひとつ変えただけで、速さが約200倍変わり、主生成物の向きまで入れ替わったことになります。
Zaitsev則は「2通りの経路を書き出して、より置換したアルケンができる方を選ぶ」という経験則でした。ここではその前段の「2通り書き出す」が成り立っていません。環状化合物では、片方の経路が立体的にはじめから塞がれていることがあります。規則を当てはめる前に、どの経路が可能かを配座から確かめる必要があります。
最後に、六員環以外の環に目を向けます。バイヤーのひずみ説は、大きな環については外れましたが、小さな環については当たっていました。
この余分なエネルギーを環ひずみといいます。環ひずみは、燃焼熱をCH2あたりに直して、ひずみのない鎖状アルカンの値と比べることで見積もれます。表の値はOpenStax Organic Chemistry(4.4節・4.5節)によります。
| 環 | ひずみ (kJ/mol) | 主な原因 |
|---|---|---|
| シクロプロパン | 115 | 角ひずみ+ねじれひずみ |
| シクロブタン | 110 | 角ひずみ+ねじれひずみ |
| シクロペンタン | 26 | ねじれひずみ |
| シクロヘキサン | ほぼ0 | — |
シクロプロパンは3点が必ず同一平面に乗るので、折りたたんで逃げることができません。結合角は60°まで押し込められ、さらに6本のC–Hがすべて重なり形になります。C–C結合の電子密度は結合軸から外側にふくらんだ形になり、しばしばバナナ結合と呼ばれます。
シクロブタンは平面の正方形なら結合角90°ですが、実際には環の対角線を折り目としてわずかに折れ曲がっています。折れると結合角はさらに小さくなって角ひずみは増えますが、C–H結合の重なりがほどけてねじれひずみが減り、差し引きで得になります。折れ曲がりの角度は文献によって25〜35°程度と幅があります。
シクロペンタンは、正五角形の内角が108°なので角ひずみはほとんどありません。バイヤーの予想では最も安定な環になるはずでした。ところが平面だと、5本のC–C結合の両側で合計10組のC–H結合が重なり形になり、ねじれひずみが大きくなってしまいます。
そこで、4つの炭素をほぼ同一平面に置き、残る1つを持ち上げた封筒形を取ります。どの炭素が持ち上がるかは固定されておらず、次々と隣へ移っていきます。 キルパトリックとピッツァーらが1947年、シクロペンタンのエントロピーを説明するために提出した描像で、擬回転と呼ばれます。環そのものは回っていないのに、折れ目だけが環を一周するためこの名前が付きました。
五員環は糖のフラノース環や核酸のリボースの骨格でもあり、その配座は生体分子の形を考えるうえで欠かせません。
Q1. 立体配座と立体配置の違いを一言で説明してください。
A1. 立体配座は単結合の回転だけで互いに移り変われる形の違い、立体配置は結合を切ってつなぎ直さないと変えられない違いです。前者は同じ化合物の別の姿、後者は分けて取り出せる別の化合物にあたります。
Q2. ブタンのアンチとゴーシュはどちらもねじれ形なのに、エネルギーが違うのはなぜですか。
A2. ゴーシュでは2つのメチル基が60°しか離れておらず、互いの空間を取り合うためです(立体ひずみ)。差は約3.8 kJ/molで、結合の重なりによるねじれひずみとは別の要因です。
Q3. メチルシクロヘキサンでエクアトリアル体が有利な理由を、鎖状分子の言葉で説明してください。
A3. アキシアルのメチル基は、2つ隣の炭素のアキシアル水素とゴーシュの位置関係になります。このゴーシュ相互作用が2つ分(約7.6 kJ/mol)あり、実測の差7.3 kJ/molとよく合います。
Q4. cis-1,3-ジメチルシクロヘキサンとtrans-1,3-ジメチルシクロヘキサンでは、どちらが安定ですか。
A4. cis体です。1,3の位置関係では、cisのときに2つのメチル基をどちらもエクアトリアルにできます。1,2や1,4とは逆になるので注意してください。
立体配座は、構造式を見ただけでは書き込まれていない情報です。同じ構造式が表す形は無数にあり、そのうちどれが優勢かは、ねじれひずみと立体ひずみという2つの目安でおおよそ決められます。そして反応が進むかどうかは、多くの場合「その反応に必要な形を取れるか」で決まります。次に反応機構を読むときは、平面に描かれた構造式の裏側で分子がどんな形を取っているかを、一度立ち止まって考えてみてください。