ポリエチレンもペットボトルのポリエステルも、小さな分子(モノマー)をたくさんつないだ高分子です。モノマーから高分子をつくる反応を重合と呼びます。
高校の化学で習う重合の代表は、「付加重合」と「縮合重合」です。エチレンの二重結合が開いてつながるのが付加重合、水などの小さな分子が抜けながらつながるのが縮合重合です。
ところが大学の教科書や論文では、「連鎖重合」と「逐次重合」という別の分け方がよく使われます。この2つは付加重合・縮合重合の言いかえではありません。何を基準に分けるかが違うので、2つの分類が食い違う例が出てきます。
この記事では、まず2つの分け方の基準を確かめ、ラジカル重合と重縮合を例に、鎖の伸び方がどう違うかを見ます。そのうえで、ポリウレタンや開環重合のように2つの分類がずれる例と、分子量の伸び方の違いを扱います。
1つ目の分け方は、ナイロンを開発したCarothersが1929年に提案したものです。Carothersは、モノマーの分子式が高分子の繰り返し単位と同じものを付加重合体(A polymer)、分子式が異なるものを縮合重合体(C polymer)と呼びました1。後者では、つながるときに水や塩化水素のような小さな分子が抜けています1。
つまりこの分け方は、できた高分子の組成を見ています。反応がどんな順番で進むかは問題にしていません。
2つ目の分け方は、鎖がどう伸びるかという成長の仕組みで分けます。Floryは1953年の教科書で、組成の違いよりも、高分子ができる過程の違いのほうが本質的だと強調しました2,3。この考え方から、今の教科書は重合を連鎖重合と逐次重合に分けています2。
2つの分け方を組み合わせると、表1の4つの欄ができます。付加重合と連鎖重合、縮合重合と逐次重合が重なることが多いので混同されやすいのですが、残りの2つの欄にも当てはまる重合があります。
| 連鎖重合 | 逐次重合 | |
|---|---|---|
| 小さな分子が抜けない(付加型) | ポリエチレン・ポリスチレンのラジカル重合(2節) エチレンオキシドの開環重合(4節) | ポリウレタンの重付加(4節) |
| 小さな分子が抜ける(縮合型) | アミノ酸由来の環状モノマーの重合(4節) | PET・ナイロン66の重縮合(3節) |
IUPACは連鎖重合を「高分子鎖の成長が、モノマーと鎖の上の活性点との反応だけで進み、成長の1段ごとに活性点が再生する重合」と定義しています4,5。名前の「連鎖」は高分子の鎖のことではなく、連鎖反応の「連鎖」を指す、という注記も付いています5。
流れは、アルカンのハロゲン化の連鎖反応と同じく、開始と成長、そして多くの場合は停止の段階からなります6。違いは成長段階で、ハロゲン化ではラジカルが水素を引き抜きますが、ラジカル重合ではラジカルがモノマーの二重結合に付加します。ラジカルが二重結合に付加すると、付加した先に新しいラジカルが残るので、その末端がまた次のモノマーに付加できます6。
置換基をもつモノマーでは、付加の向きがそろいます。スチレンでは、ラジカルがCH2側に付加して、置換基の多いほうの炭素(フェニル基の隣)にラジカルが生じる向きだけが起こります6。フェニル基の隣のラジカルは、ベンジルラジカルと同じく、不対電子がベンゼン環に広がって安定です。
この反応はラジカルが1個あれば何度もくり返されるので、最初に少しだけラジカルを作れば足ります。そのラジカルを作るために加える物質を開始剤と呼びます。成長している鎖の末端どうしが出会って結合すると、ラジカルが消えて、その鎖は伸びなくなります(停止)6。
開始剤は触媒ではありません。IUPACの定義では、開始剤は連鎖の開始を起こすために加える物質で、触媒と違って反応で消費されます5。開始剤から生じたラジカルは、最初のモノマーに付加して鎖の端に残ります。教科書によっては、過酸化ベンゾイルのような開始剤を「触媒」と書いているものもあるので6、読むときに注意してください。
活性種はラジカルとは限りません。鎖の末端がアニオンのもの(アニオン重合)、カチオンのもの(カチオン重合)、鎖の末端が金属と結合していて、モノマーが金属に配位してから鎖の末端との間に入り込むもの(配位重合)もあり、どれも「末端の活性種にモノマーが1個ずつ付く」という点で連鎖重合です7。
逐次重合では、結合ができる1回1回は、ふつうの有機反応と同じです。たとえばペットボトルのPET(ポリエチレンテレフタラート)は、エチレングリコールとテレフタル酸の間でエステル化がくり返されてできます8。ナイロン66は、アジピン酸とヘキサメチレンジアミンの間でアミド結合ができることをくり返してできます8。
図3の上の生成物は、片方の端にカルボキシ基、もう片方の端にヒドロキシ基を残しています。下の生成物にも、イソシアナト基とヒドロキシ基が残っています。そのため、これらの分子はモノマーとも、同じような別の分子とも反応できます。これが「どの長さの分子どうしでも反応する」という逐次重合の特徴です。
逐次重合のうち、エステル化やアミド化のように小さな分子が抜けるものを重縮合、抜けないものを重付加と呼びます。IUPACはどちらも「あらゆる重合度の分子どうしの反応で鎖が成長する重合」とし、その反応が縮合なら重縮合、付加なら重付加と定義しています4。
求核アシル置換の記事で見たエステル化・アミド化は、重縮合でも同じ機構で進みます。2つの官能基をもつモノマーを使うと、生成物にも反応できる官能基が残るので、反応が1回で止まらずに高分子までつながります。
表1のうち、付加型なのに逐次、縮合型なのに連鎖という欄が、2つの分類が食い違う例です。
ポリウレタンは、ジオールとジイソシアネートから、小さな分子が何も抜けずにできます2。アルコールの酸素がイソシアネートの炭素に付加してウレタン結合ができる反応で8、この方法を開発したBayerは、1947年の総説でこれを「ジイソシアネート重付加法」と呼んでいます3,9。組成だけを見れば付加重合ですが、成長の仕方は重縮合と同じ逐次重合です3。
開環重合も、組成と成長の仕方が分かれる例です。エチレンオキシドのような環状のモノマーは、環が開いてつながるので、小さな分子は抜けません。アルコキシドを開始剤にすると、鎖の末端のアルコキシドが次のエチレンオキシドの環を開く反応がくり返され、連鎖重合として進みます10。開環重合の多くは連鎖の仕組みで進みます2。
図4のように、同じポリ(オキシエチレン)でも、エチレンオキシドの開環重合で作れば付加重合体、エチレングリコールの重縮合で作れば縮合重合体になります3。組成による分類は、できた高分子だけを見ても決まらないことがある、ということです。
逆に、組成で見れば小さな分子が抜けているのに、連鎖の形で伸びる重合もあります。アミノ酸から作る環状のモノマー(N-カルボキシ無水物)の重合では、鎖の末端にモノマーが1個ずつ環を開いて付き、そのたびに二酸化炭素が1分子抜けます。繰り返し単位はモノマーから二酸化炭素を除いた組成なので、Carothersの分け方では縮合型になります。ただし、二酸化炭素が抜けるのは環が開く成長の段階そのものではなく、そのあとの別の段階です。そのためIUPACの2021年の勧告は、この重合を、成長の1段1段が縮合反応である「縮合型連鎖重合(condensative chain polymerization)」とはふつうみなさない、としています7。
IUPACの用語も、成長の仕組みで分けた名前を基本にしていますが、連鎖重合でないほうの呼び方は時期によって違います。IUPACは長いあいだ、これを重縮合(polycondensation)と重付加(polyaddition)の2つに分けて呼び5、まとめて呼ぶ「step polymerization」「step-growth polymerization」は使わないよう勧めていました7。その後、2026年に出版された勧告は、逐次重合(step polymerization)を「どの長さのモノマー・オリゴマー・高分子の分子どうしの反応でも成長が起こる重合」と定義し、その中を付加型の逐次重合(重付加)と縮合型の逐次重合(重縮合)に分けました。連鎖重合も同じように付加型と縮合型に分けられ、表1の4つの欄とおおむね対応する形になっています11。ただしIUPACの付加型・縮合型は、成長の1段ごとの反応が付加か縮合かで決まるので、組成で分けた表1とは欄がずれる例もあります(N-カルボキシ無水物の重合は、IUPACでは縮合型の連鎖重合とはふつう見なされません7)。古い本や論文を読むときは、どの時期の用語かに気をつけてください。
古い用語の「付加重合(addition polymerization)」は、今の重付加と連鎖重合の両方を含む広い語だったと、IUPACは注記しています4。日本語でも「付加重合」と「重付加」は別のものを指すので、取り違えないようにしましょう。
成長の仕方が違うと、反応の途中で何ができているかも違います。
連鎖重合では、反応の初めから分子量の大きい高分子ができます。反応が進んでも1本1本の鎖の長さはあまり変わらず、高分子の本数が増えていきます2。反応の途中では、長い鎖と未反応のモノマーが混ざっています。
逐次重合では、反応の初めにできるのは二量体や三量体のような短い分子です。分子量の大きい高分子が得られるのは、官能基の98%以上が反応した、反応のほぼ終わりになってからです2。
連鎖重合のうち、停止や不可逆な連鎖移動が起こらないものをリビング重合と呼びます7。リビング重合で開始が速く、すべての鎖がほぼ同時に伸び始めて伸び続ける場合には、分子量は反応の進み具合に比例して大きくなります2。開環重合の多くもこの形に近くなります2。
逐次重合でわずかに反応し残すと分子量が大きく下がるのは、鎖の両端の官能基が最後まで反応してはじめて、長い鎖どうしがつながるからです。どのくらいの反応率でどれだけの分子量になるかは、Carothersの式で見積もれます。
Q1. ポリウレタンは「付加重合・縮合重合」と「連鎖重合・逐次重合」の分け方で、それぞれどちらに当たりますか。理由とあわせて答えてください。
A1. 組成で分ければ付加重合(重付加)です。ジオールとジイソシアネートがつながるときに小さな分子が抜けないからです。成長の仕方で分ければ逐次重合です。ウレタン結合ができる反応がくり返され、モノマーどうしでも、短い鎖どうしでも反応できるからです。
Q2. エチレンオキシドの開環重合で作ったポリ(オキシエチレン)と、仮にエチレングリコールの重縮合で作ったものは、繰り返し単位が同じです。それなのに付加重合体と縮合重合体に分かれるのはなぜですか。
A2. Carothersの分け方は、繰り返し単位の組成がモノマーと同じか(付加型)、小さな分子が抜けて違うか(縮合型)で決まるからです。エチレンオキシドは –CH2CH2O– と同じ組成なので付加型、エチレングリコールは水が抜けて –CH2CH2O– になるので縮合型です。どのモノマーから作ったかで分類が変わります。
Q3. ラジカル重合の開始剤を「触媒」と呼ぶのは正しいですか。
A3. 正しくありません。触媒は反応のあとに元に戻りますが、開始剤は分解してラジカルになり、そのラジカルは最初のモノマーに付加して鎖の端に組み込まれます。IUPACも、開始剤は触媒と違って反応で消費されるものとしています。
Q4. 反応の進み具合が50%(連鎖重合ではモノマーの半分、逐次重合では官能基の半分が反応した時点)で重合を止めました。連鎖重合と逐次重合では、反応液の中身はどう違いますか。
A4. 連鎖重合では、分子量の大きい高分子と、まだ反応していないモノマーが混ざっています。逐次重合では、官能基の半分が反応しただけなので、二量体や三量体のような短い分子が中心で、分子量の大きい高分子はまだほとんどできていません。
重合の分け方には、できた高分子の組成を見る「付加重合・縮合重合」と、鎖の伸び方を見る「連鎖重合・逐次重合」の2つがあります。連鎖重合では末端の活性種にモノマーが1個ずつ付き、逐次重合では官能基どうしの反応がどの長さの分子の間でもくり返されます。2つの分類はたいてい重なりますが、ポリウレタンの重付加や開環重合のようにずれる例があるので、どちらの基準で分けているのかを意識することが大切です。
連鎖重合のうちラジカル重合の速さや分子量の決まり方、逐次重合で分子量が反応率にどう依存するかは、それぞれ別の話題として深められます。この記事で見た2つの成長の仕方が、その出発点になります。